- 金融庁が代表的な8商品を分析したところ、外貨建て一時払い保険は購入後4年間で約6割が解約等になっていた。契約継続期間の平均は2.5年で、利益のほとんどは円安によるもの、解約時の費用がその利幅を押し下げていた
- 目標値に届くと解約され、同じ顧客に同じ商品が売られる「乗換」が多数あり、そのたびに販売手数料が二重にかかっていた。手数料は初年度に厚い形(例として初年度5.5%、2年目以降0.1%)だった
- 既契約者が見るのは、解約控除の残り年数、市場価格調整の向き、為替手数料、積立利率の更改日。解約か継続かの二択ではなく、円建てへの変更や一部解約も並べて比べる
営業職員から月払いで入った外貨建て終身・変額保険の人は、手数料の高い保険の見抜き方 と 返戻率の谷 が先に役立ちます。
金融庁は何を調べたか
外貨建て一時払い保険は、まとまったお金を一度に払い込み、米ドルや豪ドルで運用する終身保険などです。銀行や証券会社の窓口で売られることが多い商品です。
金融庁は2023事務年度、主要行等6行、地域銀行グループ13先、保険会社8社をモニタリングし、2024年4月3日に中間報告を、7月5日に最終報告を公表しました。外貨建て一時払い保険については、代表的な運用型の8商品について保険会社からデータを集め、運用成果を分析しています。
4年で約6割が解約等
中間報告と最終報告の要点です。
- ターゲット型保険を中心に、購入後4年間で約6割の解約等が発生していた。商品を作ったときの長期運用の前提より、契約の継続期間が短くなっている
- 2023年8月末時点で運用が終わった契約(約55万件、継続期間2.5年)は、継続期間5年以上の契約(約9万件、5.7年)や、同じような資産に投資する先進国債券の投資信託と比べて成績が劣っていた
- 7月の最終報告(概要版)は、4年で約6割が解約等になっていることから、契約継続期間の平均は2.5年と短くなっているとまとめている
- 運用が終わった契約の成果を要素別に分けると、積立金が増えた効果は薄く、利益のほとんどは円安によるもの。解約時の市場価格調整と解約控除が、その利幅を押し下げていた
ターゲット型保険とは、円換算の解約返戻金が、契約者の決めた目標値(払込保険料の105%、110〜200%など)に届くと、自動的に円建ての終身保険などに切り替わる商品です。
目標に届いたら利益を確定する。仕組みとしては分かりやすいものです。問題は、その後でした。
乗換で手数料が二重にかかる
中間報告は、全ての重点モニタリング先で、ターゲット型保険のほとんどが目標値に到達すると解約され、同時に同じ商品を同じ顧客に売る事例が多数あったと書いています。
なぜそれが顧客に不利なのか。報告書の注記はこう説明します。
途中解約した上で、同一商品の再購入(乗換え)を行った場合には、解約期間分の販売手数料が戻入されないため、顧客は二重に販売手数料等を支払うこととなる
金融庁はこうした乗換販売を「顧客にとって経済合理性があるとは言えない」と評価しました。保障や相続のニーズがあるとして売った顧客についても、途中で解約した人はそのニーズを満たせていないはずだ、とも指摘しています。
背景にあったのが手数料の形です。販売会社が保険会社から受け取る手数料は、全ての重点モニタリング先で初年度の比重が高い「L字型(例えば、初年度5.5%、2年目以降0.1%等)」でした。1,000万円の契約なら、例示の率で初年度に55万円です。
一方で、販売会社の手間は契約時より、2年目以降の顧客へのフォローの方が合計では大きい。手間に見合わない手数料体系が乗換販売につながる一因だ、というのが金融庁の見方でした。
手数料が書類に出てこない理由は手数料の高い保険の見抜き方に書いています。
その後、何が変わったか
手数料の形と目標値機能
日本生命は2024年8月28日、銀行などで売る外貨建て一時払い保険について、2025年4月以降の新契約から次の対応をとると発表しました。
- 目標値設定機能の廃止(目標到達後の解約等で、中長期の運用効果や保障のメリットを受けにくい実態があるため)
- 金融機関代理店に払う手数料を、初年度を合計の半分程度とし、次年度以降の比重を高める型を新設。既存の手数料体系は2026年3月末で廃止
金融庁の2025年保険モニタリングレポートは、初年度の販売手数料を減らし次年度以降を増やす「販売手数料フラット化」が、生命保険会社と代理店で2025年度から進んでいると記しています。あわせて、契約初期費用や解約控除を引き下げた社がある一方、コストを理由に検討課題としている社もあること、銀行など以外の乗合代理店向けの初年度手数料は据え置いている社があることも書いています。
変わったのは主に新しい契約です。すでに持っている契約の手数料体系や目標値の設定は、契約時のままです。
苦情件数と運用成績
生命保険協会によると、銀行等代理店で起きた外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情は、2019年度の2,822件をピークに、2024年度742件、2025年度744件でした。
金融庁が販売会社に公表を求めている共通KPIでは、外貨建て保険を持つ顧客のうち運用評価がプラスの人の割合(事業者ごとの単純平均)は、2023年3月末で約4割、2024年3月末で約8割、2026年3月末で8割強(全事業者88.7%)でした。上下の主因は為替と海外金利で、2026年3月末については金融庁自身が「為替水準の変動等の影響」と書いています。円安が続いた期間の数字だということは、頭に置いておいた方がいいでしょう。
既契約者が確かめること
手元に外貨建て一時払い保険がある人向けに、確かめる順番を書きます。報道や周りの話をきっかけに、慌てて動く必要はありません。
① 契約の型を書き出す
証券や契約時の書面で、次を確かめます。
- 通貨(米ドル、豪ドルなど)
- 積立利率が何年固定で、次の更改日はいつか
- 目標値(ターゲット)が設定されているか。設定されていれば何%か
- 円建ての死亡保険金を保証する特約が付いているか
- 解約控除と市場価格調整(市場金利調整)があるか
② 解約控除の残り年数
一時払いの外貨建て保険は、契約から一定期間内に解約・一部解約すると、解約控除がかかるものが多くあります。率を公開している例として、日本生命の商品のパンフレット(2025年10月版)では、一時払保険料に対して次の率を差し引きます。
| 経過年数 | 0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 解約控除率 | 4.0% | 3.6% | 3.2% | 2.8% | 2.4% | 2.0% | 1.6% | 1.2% | 0.8% | 0.4% | なし |
1,000万円の契約を3年目に解約すれば、この控除だけで28万円です。率を開示していない商品も多く、その場合は契約者サイトの試算か窓口で「今日解約した場合の金額」を聞くしかありません。
③ 市場価格調整の向き
市場価格調整は、解約時の金利が契約時より高いと解約返戻金が減り、低いと増える仕組みです。上の商品では、金利が変わらなくても残存期間に応じて一定率が差し引かれる係数(0.1%)が入っていて、パンフレットの例では残存10年で0.98%、1年で0.10%です。
この商品の場合、10年ごとの積立利率の更改日に解約すれば、市場金利調整も解約控除もかかりません。同じような仕組みの契約なら、判断の期限を更改日に置くという考え方ができます。
④ 為替手数料は往復でかかる
円で払い込み、円で受け取ると、両方で為替手数料がかかります。1ドルあたり50銭ずつなら往復1円です。為替相場が動かなくても、円換算の受取額は払込額を下回ることがあります。
⑤ 選択肢を並べる
一時払いの保険には「払済」がありません。代わりに、商品によって次の道があります。
- そのまま続ける
- 円建ての終身保険などに変更する(為替を確定させる。変更後は外貨に戻せない、最低保証がなくなる、といった条件が付くことがある)
- 一部解約(減額)する
- 年金で受け取る
- 解約する
比べるときは、同じ日付・同じ為替で計算した金額を並べます。
⑥ 何のために持っているか
金融庁の中間報告は、保障・相続のニーズがある顧客にターゲット型保険が売られていた一方、途中で解約した人はそのニーズを満たせていないと指摘しました。
相続や死亡保障が目的なら、続けること自体に意味があります。運用が目的だったなら、外貨建ての資産を持つ手段はほかにもあります。当サイトでは、資産を増やす役割は証券口座に、保険は保障の最低限に、と分けて考えています。どれが合うかは、契約の条件と家計によって変わります。
乗換の提案を受けたら
解約して別の外貨建て一時払い保険に入り直す提案は、中間報告が指摘した形そのものです。新しい契約には新しい手数料と解約控除がかかります。提案を受けたら、今の契約を続けた場合と乗り換えた場合の数字を、同じ前提で並べてもらってください。並べた表が出てこなければ、その日は決めなくてかまいません。
死亡保障がいくら必要かは、一時払いの保険金額とは別に計算できます。自分の数字で試算すると、手元の保険金額が保障として多いのか足りないのかが分かります。
出典
- 金融庁「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果(2023事務年度中間報告)」(2024年4月3日)p.1・p.3-5 https://www.fsa.go.jp/news/r5/kokyakuhoni/202403/01.pdf
- 金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果(概要版)」(2024年7月5日) https://www.fsa.go.jp/news/r6/kokyakuhoni/fdreport/01.pdf
- 金融庁「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月4日)p.57-58 https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/02.pdf
- 日本生命「外貨建一時払保険における『顧客の最善の利益』追求に向けた対応について」(2024年8月28日) https://www.nissay.co.jp/news/2024/pdf/20240828.pdf
- 日本生命「ロングドリームGOLD3」契約締結前交付書面(契約概要/注意喚起情報)兼 商品パンフレット(2025年10月版)p.24・p.33 https://www.nissay.co.jp/kojin/shohin/madohan/longdreamgold3/pdf/longdreamgold3.pdf
- 金融庁「外貨建保険の共通KPIに関する分析(2024年3月末基準)」(2025年3月10日) https://www.fsa.go.jp/news/r6/kokyakuhoni/20250310/kpi_hoken_20250310.pdf
- 金融庁「外貨建保険の共通KPIに関する分析(2026年3月末基準)」(2026年9月18日) https://www.fsa.go.jp/news/r8/kokyakuhoni/20260918/kpi_hoken_20260918.pdf
- 生命保険協会「生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について」内「外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数について」(2025年度は2026年7月6日訂正値、2026年10月14日確認) https://www.seiho.or.jp/member/complaint/
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